現在の日本では「イメージ」が本来の英語の image の意味から滅茶苦茶に拡大解釈されており、英語として殆ど通じません。Image の本来の意味は画像、及び心に描く視覚的な像のことであり、日本人が盛んに使っている「概念」「連想するもの」「意味合い」「象徴」「感じ・雰囲気」等の意味はありません。「印象」という意味の image も本来は特定の人についての頭に絵として思い描ける印象、さらにそこから派生した人間の集団としての国や組織の印象であり、無機物には普通使われません。また前述の通り image は「絵として頭の中に思い描けるもの」ですから、抽象概念については使われません。

以下に「イメージ」の間違った使い方と、正しい英語の表現の例を挙げます。

  • 赤は女性の色というイメージがある -> The color red is usually associated with women, femininity
  • アメリカでの日常生活は危険に満ちているというイメージがある -> I have an impression, there is a popular notion, that the daily life in the US is filled with danger
  • 和服を着るのはとにかく面倒というイメージがある -> Many people think wearing kimonos is a lot of hassle
  • 鉄は重いというイメージがある -> Steel is usually considered heavy
  • 食堂を古い民家のイメージに改築した -> They remodeled the restaurant into an old rustic house style, feel
  • 「暴れる」は良いイメージで使われることもある -> “暴れる” is sometimes used with positive connotations

また image の所属先は常に思い浮かべられる物そのものであり、image を頭に持つ人ではありません。つまり日本人が盛んに使う「私のイメージでは」という文を英語に無理矢理訳そうとした “my image is” は「私の持っている印象は…」という意味よりもむしろ「私が他に与える印象は…」という意味になってしまいます。同様に “What is your image of Japan?” は全く通じないことはないとしても、英語人は普通使わない不自然な文になります。

「想像図」にも image は使われず、代わりに artist’s rendition/impression/interpretation が良く使われます。Artist’s rendition/impression/interpretation は文字通り「芸術家の描写・印象画」、つまり現存しないものを画家・イラストレーターが想像して描いた絵、ということです。

  • An artist’s rendition of the new station -> 新しい駅の想像画、「イメージ」画

そもそも英語人は image を日本人が使いたがるほど使いません。例えば日本人が盛んに言う「~についてどういうイメージを持っていますか?」は英語では普通 image を使っては表現されません。 “The images of Japan” というと、どちらかと言うと「日本の印象」というよりもむしろ「日本と聞いて思い浮かべる情景」、例えば富士山と桜、大混雑した渋谷駅、京都の舞妓さん、そう言った「画像」のことを指してしまいます。「日本についてどういう印象があるか」という質問は以下のような文がもっぱら使われます。

  • What kind of images do you have about Japan? ☹(間違ってはいないが一般的でないし、前述の通り「日本と聞いて思い浮かべる情景は何ですか?」とも解釈されかねない)
  • What do you think of Japan? -> 日本をどう思いますか? ❤
  • How do you view Japan? How do you see Japan? -> 日本をどういう目で見ていますか?❤
  • How do you describe Japan? -> 日本を言葉で表すとしたら?❤
  • What comes to your mind when you think about Japan? -> 日本について考える時心に浮かぶことは?❤
  • What do you associate with Japan? -> 日本に伴う、結びつく、概念と言えば?❤

また「イメージアップ」「イメージダウン」は和製英語で英語圏では通じません。image そのものには価値判断は含まれておらず、良い image も悪い image もどちらもあるので、単に上下はしません。さらに image は具体的にどういう image であるのかが普通明らかにされ、単独で使われることはあまりありません。以下の例を参照して下さい。

  • The company is trying to improve its image ☹(間違ってはいないがあまり一般的でない)
  • The company is trying to dispel its eco-unfriendly image -> その会社は環境に悪いというイメージを払拭しようとしている ❤
  • The company is trying to boost its eco-friendly image -> その会社は環境に優しいというイメージを増幅しようとしている ❤
  • Her girl-next-door image took a hit -> 彼女の(親しみやすい)隣の家の女の子のイメージは凹んだ ❤
  • The scandal hurt the politician’s image ☹(間違ってはいないがあまり一般的でない)
  • The scandal hurt his stand-up-guy image -> スキャンダルで彼の正義の見方のイメージは傷ついた ❤

「イメージガール」も和製英語です。

  • 彼女は銀行のイメージガールとして起用された -> She has been chosen as the bank’s spokesmodel, brand representative, brand ambassador

「イメージチェンジ」もまた和製英語で、英語圏では全く通じません。髪型や服装等の外観については以下のような表現がもっぱら使われます。

  • She’s had a makeover
  • She’s got a new look
  • She started dressing differently -> 彼女はそれまでと全然違う服装をし始めた

また動詞 imagine は日本で言う「イメージする」「イメージがある」ではなく、「(よく知らない事について)想像する」になることに注意して下さい。一方 envision はよく知っている事について、未だ現実化していないものを頭の中で具体的に描く「想像する」なので、「イメージする」に近くなります。

  • I imagine the US is a dangerous place -> 私は(米国には行ったこともないし、殆ど知らないが)危険な所だと想像している
  • I have an impression that the US is a dangerous place -> 私は(少し行ってみて、或いは行ったことはないが聞いたり読んだりした情報によると)米国は危険な所だという印象がある
  • I had imagined him as an introvert before I actually met him -> 私は実際に会う前は彼は内向的な人と想像していた
  • I have an impression that he is introverted -> (私は彼のことをそれほど良く知らないが、何度か会った経験によれば)彼は内向的な人の印象がある
  • This car was designed with young professionals living in big cities in mind -> この車は大都会に住む若くて有能な人をイメージして、念頭に置いて、設計されている
  • The new station is envisioned as a place where people gather and enjoy -> 新しい駅は人々が集まり楽しむ場所とイメージ、想定、されている

ここまでくると、皆さんも妙なカタカタ語を使うことの弊害が嫌というほど感じられないでしょうか?英語は日本語とは全く違う言葉ですから直訳も出来ないし、英語は英語のまま学び、話すことが必要です。正しい英語を話せるようにし、一方で正しい日本語を話すようにしましょう。